ぱっちりひつじ

げんじつにっき

ひつじAによる全曲解説:第6回「ヘイシロガイとヘイクロガイ」

ひつじA:りょう :
Category: おんがく,ゆめ

さてさて、楽曲解説コーナーもいよいよ後半戦へ。
ここからは毎週更新で行きます!
今回は「ヘイシロガイとヘイクロガイ」。

■ヘイシロガイとヘイクロガイ

作曲、レコーディング共に、かなりの難産だったこの曲。
演劇チックでコミカルな雰囲気もありますが、悪夢を元にしています。
ヘイシロガイとヘイクロガイという2匹の貝にもみくちゃにされる、
「海に落ちた一人の男」とは、僕のことです。

噛み付くことで腕の細胞が膨張させ、肉を細長く伸ばすヘイシロガイ。
逆に、腕の細胞が陥没させ、ぽっかりと穴を開けてしまうヘイクロガイ。
2匹は互いに敵対する関係で、
自分の力を誇示するために、海に落ちた獲物に何度も噛み付き、
やがては獲物を死に至らしめます。

そんな彼らの格好の餌食になってしまった僕。
腕の肉は伸び、そして穴が開き、
痛みに耐えながら必死で抵抗するも、やがて意識は遠くなり、
叫ぶことすらできなくなった僕は、ぐったりと海の中で力尽きたのでした。

・・・

そんなわけで。
悪夢感を高めるべく、意識的にメタリックなアレンジを目指してみたのですが、
2匹の貝を演じるボーカル二人のユーモア溢れる歌唱もあり、
思ったより聴きやすい曲になった気がしています。

録音に関しては、楽器隊全員がヒィヒィ言ってましたね・・・。
ウラ拍重視のややこしいフレーズのユニゾンあり、ポリリズムあり、唐突な転調あり・・・。
「ちょっと凝り過ぎたかなぁ」と反省したりもしましたが、
無事に仕上がってホッと一息。

「メタリックなGENESIS」を意識していたのですが、
なんだかんだで「コミカルなDREAM THEATER」になったような。
まぁ、楽器隊全員、昔からDREAM THEATERをよく聴いていたので、
当然の成り行きではあります。

こだわった部分の話をすると、「ちくっちくっ」の部分のパンニング。
物語の展開に合わせて、ボーカルの左右配置を変えていたりします。
終盤、勝敗が分からなくなる箇所では、
ヘイシロとヘイクロが左右に行ったり来たり。
ぜひヘッドフォンで聴いてみてください。

あと、この曲では、珍しくボコーダー(シンセを声のように鳴らすやつ)を使っています。
2匹の貝を主役として際立たせたかったので、
「海に落ちた一人の男」は、思い切って人間味を消してしまおうと。
鍵盤を押さえながらマイクに向かってブツブツと「ぎゃあっぎゃあっ」とか喋っている時は、
ちょっと変なテンションになりました。

ひつじAによる全曲解説:第5回「キノコがはえたら」

ひつじA:りょう :
Category: おんがく,ゆめ

今回の解説は、「キノコがはえたら」。
寒くて乾燥した冬にうってつけの、
じめじめとモイスチャー度の高い1曲です。

■キノコがはえたら

メタル要素の少ない、ちょっと浮いた感じの曲ですが、
実はこれ、10曲のうちで最も古く、
「夢を歌にする」というアイディアを形にしてみた最初の曲だったりします。

これができた当時は、ロックバンド形式でやる予定は無く、
ちょっとしたお遊び企画のつもりだったんですね。
で、ひつじD:きょうせい君に試しに聴かせてみたところ、妙に気に入ってくれまして。
そこから色々と盛り上がり、バンドメンバーを集めてアルバムを作ろう、
という計画がどんどん現実化していったのでした。
そういう意味で、ぱっちりひつじ結成のきっかけとなった曲と言って良いかもしれません。

元になっている夢は、
部屋の中に少女が一人で引きこもっていて、
その部屋の中で育つ、1本のキノコの成長を楽しみに待っているというもの。
夢を見ている「僕」はその場には登場せず、第3者的にその様子を見守っています。

その少女はとても孤独で、
育っていくキノコに対して強い愛着を持ち、
やがてはそれを食べることでキノコと同化し、
自分が生まれ変わるのだと考えていました。

すくすくと育っていくキノコ。
ところがある日、大量のキノコが、一斉に、そして急激に生え始めます。
少女が気付かぬうちにキノコの胞子は部屋中に充満しており、
それが一斉に育ち始めたのでした。
みるみるうちに部屋の中はキノコで埋め尽くされ、
少女は叫び声を上げながら、慌てて部屋の外へ逃げ出します。

・・・

とまぁ、こんな怪しい内容の夢ですが、
「引きこもりの少女がようやく外界へ出て行く物語」として捉えることもできるなぁと思い、
あまり気持ちの悪い曲にならないように心がけました。

大量のキノコが生えてくるシーンでは、
ひつじE:ゆうに、キノコの胞子役をやってもらいました。
変幻自在の声で、胞子の音を出してもらっていますが、
これも、なるべくかわいい感じで演じてもらってます。

また、デモの段階では全体的にもっと淡々としていたのですが、
エフェクティブなベース、ギターによる効果音の数々、ドラムの多重録音など、
各メンバーによる様々なアイディアが組み合わさり、今の形になりました。
そういう意味で、非常にバンドらしい作り方ができたなぁと思っています。

終盤のマーチ風のスネアがゆっくり左右に移動するのは、
ひつじD発案による、某プログレ名曲へのオマージュ。
アルマジロ、平清盛と言えばきっと伝わるかと。

最後に、アートワークについて。
ひつじB:くうかんきんぎょの作品としては、かなり珍しい感じだと思います。
なにしろ、常日頃「人物を描くのが苦手だ」と語っているのに、女の子を描いているという。
ミーティングの折には、アイディアという名の妄想が膨らみ、
色々とヤバイ話で盛り上がりましたが、
あえてここでは紹介しません(笑)

ひつじAによる全曲解説:第4回「むらさきのみず」

ひつじA:りょう :
Category: おんがく,ゆめ

少し間があいてしまいました。
今回は、試聴動画の第1段になった「むらさきのみず」です。
物語性の強い曲のため、解説も長くなってしまいました。

■むらさきのみず

「暗い」と評判の(?)曲です。
たまに、「放射能問題の歌?」と質問を頂くこともありますが・・・
小学生の頃から何度も見ている悪夢を元にしているだけで、
何の社会性もメッセージもないです、なんか、すみません。

・・・

夢の中での僕は、隣町にある公園で一人で遊んでいました。
夕方近くになり、もう帰らなければ思い始めた頃、ふと気が付きます。
「あれ?自分の家にはどう帰れば良いんだろう?」

迷子になったことに気付くと同時に、急にノドが乾き始めました。
水を飲もうと、公園にある水道の蛇口をひねると・・・
そこから出てきたのは、毒々しい紫色の水。
いつのまにかポツポツと雨も振り出しましたが、それも紫色。
紫色に染まった公園の中で、僕は不安のあまり泣き出しそうになりました。

そのとき。
目の前に、見慣れた階段が現れます。
それは自分の住んでいる団地の戸口でした。
地面を流れる紫の水が、どんどんその中に吸い込まれていきます。
この階段を上れば、4階にある自宅へ戻れる。
そう感じた僕は、
一抹の不安を感じつつも、階段を上ってみることにしました。

階段を上る僕。
1階、2階、3階と上っていくのですが・・・
なぜか4階がありません。
3階の次が5階になっていて、自分の家など影も形もないのです。

あまりのショックにしばらく呆然としていた僕ですが、
ふと気付くと、下のほうの階から、何やらザワザワ物音がすることに気付きます。
降りてみると、階段の踊り場で、なぜか僕の両親が結婚式を挙げていました。
しかし何かが変です。
よく見ると、母親がタキシードを着て口ひげをはやし、
父親がドレスを着て口紅を塗っているではありませんか。
他の人たちは意味の分からない言葉を喋りながら急に笑い出したり、暴れ出したりしています。

悲しく、そして気持ちが悪くなった僕は急いでその場から逃げ出し、公園へと引き返しました。
紫色の雨はずっと降り続いており、
もう、どうすることもできずに、一人でうずくまっていました。

・・・

とまあ、そんな夢です。
救いようの無いストーリーなうえ、大人になってからも全く同じ内容の夢を見るので、
正直自分でも気持ち悪かったのですが、
これを曲にしてからというもの、すっかりこの夢を見なくなりました。
音楽に変えてしまうことで、この夢を卒業できたのかもなぁと思ったりしています。

そうそう、この曲も色々と仕掛け満載なので、
ちょっと種明かしをしてしまいましょう。

「ぼくのいえは どこにあるの?」以降のインストパート。
これは、”5階建ての団地で、4階が無い様子”を表現しています。

ベースとドラムは5階建てを表すために5拍子を繰り返しているのですが、
その上にポリリズムで乗るギターは、
トップノートのFの音程が、5回、3回、2回、1回と登場するようになっています。
Fは、「FLOOR」のF。つまり、5F、3F、2F、1F、という具合ですね。
あとは、ちょっとした遊び心として、
ギターとハモっているオルガンは、FではなくBの音程を軸にしています。
これは、地下を表す「BASEMENT」とかけています。
ギターが地上、オルガンが地下という感じで、ここがどこなのかわからない、
不安な気持ちを表現しています。

他には、階段を上るパートのスネアの音にシンクロして、
「タッタッタッタッ・・・」という足音のSEがこっそり入っています。
作り手である自分でも聴き取れないくらいの音量なのですが、
有るのと無いのとではけっこう違うもので。
上っている感じがより強まったこともあり、
やって良かったなぁと思っている部分です。

それ以外にも、ストーリーに合わせてかなり綿密にアレンジをしているので、
興味のある方は是非いろいろと解析してみてください。

ひつじAによる全曲解説:第3回「もう、ありますよ」

ひつじA:りょう :
Category: おんがく,ゆめ

まずは、先日の「M3-2012秋」。
たくさんの方が訪れてくださり、本当に感謝しております!
少し生活が落ち着いてきたので、全曲解説コーナーを再開しようと思います。

■もう、ありますよ

幸せモードから急激に悪夢へと転じる、ちょっと変わった構成の曲。
これは、2010年くらいに見た夢を元にしています。

夢の中での自分は、その日、ルンルン気分で曲作りをしていました。
身の回りにある色々な題材を眺めてはイメージを膨らませ、
自分の好きなもの、嫌いなもの、どうでも良いもの、
その全てを盛り込んだ、渾身の1作を作ろうとしていました。

そして苦心の末、やっと曲が完成します。
大喜びの僕でしたが、ふと机の端に目をやると、一通の手紙が置いてありました。
恐る恐る開けてみると、そこには小さな字でこう書いてあったのです。
「そのうたは、もう、ありますよ」

ショックを受けた自分は、その曲を破棄し、手紙もビリビリに破くのですが・・・。
次の日も、その次の日も、その手紙はいつのまにか置いてあるのでした。

・・・。

なんといいますか、音楽をやっている人間にとって、
ひじょーに後味の悪い夢だったわけで。
あまりに悔しかったので、どうにかして面白い曲にしてやろうと思い、
色々と工夫を盛り込んでしまいました。

イントロ部分は料理番組のテーマ的なイメージ。
そして、曲が完成するシーンでは、「チーン!」という電子レンジの音を入れています。
「手作りかと思ったらレトルト食品だった」という感じで、
音楽を料理になぞらえて、自虐的な感覚をこっそり込めてみました。

あと、おまけレベルの話ですが、ちょっとした「謎解き」も盛り込んでいます。
中盤の、色々な単語が並ぶ箇所。
ここには、何かが潜んでいます。
歌詞だけみていても分からないので、ボーカルに注目して曲を聴いてみてください。
仲間はずれの単語が見つかったら、あとはそれらの共通点を探せば・・・。
まぁ、分かっちゃうと「なーんだ」って感じですが。

ひつじAによる全曲解説:第2回「ぶらぶらねこ」

ひつじA:りょう :
Category: おんがく,ゆめ

先日発表したばかりの1stアルバム、なかなか好評のようで、嬉しい限りです。
そんなわけで、色々と温かいうちに2回目の楽曲解説をお送りします。

■ぶらぶらねこ

試聴動画の第2弾として選んだ曲。
元になっているのは、数年前からちょこちょこ見ている、猫がガブッと右腕に噛み付く夢です。

かなり大きな猫で、重いし、牙が皮膚に入り込んでいくし、生暖かい血の感覚もあるのですが、
痛みは感じず、むしろ「気持ち良~い」感じでした。
腕をぶんぶん振っても決して離れることはなく、ずっと噛み付いたまま。
そうこうしているうちに、その猫がとても愛しくなってきて、
「このままずっと噛み付いていて欲しい」と思うようになっていく・・・
そんな夢です。

これを歌にするなら、明るくて前向きな感じにしたいなぁ~と思ったので、
ある晴れた休日、手帳とペンを持ってわざわざ散歩に出かけ、歩きながら歌詞とメロディを考えました。
家にひきこもって曲を作ることが多い自分としては、ちょっと異色の作曲方法でしたね。

その甲斐あってか、他の曲とは少し傾向の違う、爽やかで可愛い曲に仕上がりました。
Aメロ→Bメロ→サビという一般的な歌モノの構成になっているのも、全10曲中これだけです。

とはいえ。
リズムはかなり複雑でテンポも速く、メタルっぽい刻みフレーズやツインペダルを強いる箇所もあり、
ボーカル二人の気持ち良い歌いっぷりとは対照的に、楽器隊の面々はだいぶ苦労していたようです。
アドリブを混ぜる余地が全く無く、演奏における緊張度としては、全曲の中でも1・2を争うかもしれません。
自分を含め、何テイクも録音を繰り返して、ようやく今の形になりました。

ちなみにギターソロは、フレーズや奏法も含め、全てみうみうに考えてもらっています。
実にギタリストらしい、躍動感あふれるソロになっていて、データをもらったときには思わず「おおっ☆」となりました。

アートワーク的なところでは、
田園風景にかかる虹、空の青さがとても美しく、これまたちょっと異色の爽やかさを醸し出しているように思います。
夢の中で感じた愛情や希望が見事に再現されていて、凄く良いです。

CDのブックレットを片手に、青空を眺めながら気持ちよく楽しんで頂きたい1曲です。

ひつじAによる全曲解説:第1回「アイガ・アピア・アッキーア」

ひつじA:りょう :
Category: おんがく,ゆめ

9/22に無事発売されました!
ぱっちりひつじの1stアルバム「ゆめにっき1」!

夢で見た世界を曲にする、というコンセプトで活動しているわけですが、
なにぶん夢の世界であるゆえ、
前後関係、脈絡については、正直めちゃくちゃです。

そのめちゃくちゃさ自体を楽しんで頂きたい、
色々想像を膨らませてもらいたい、とは思いつつも、
「なんじゃこりゃ?わからん!」と思われた方も多いのではないかと思います。
なので、若干おせっかいかもしれませんが、
ざっくりと全曲の解説をしてみることにしました。

■アイガ・アピア・アッキーア

この曲は、2年ほど前に見た夢を元にしています。
妙にスケールが大きく、冒険譚のようなワクワク感があったので、
「アルバムの1曲目はコレしかない!」と、作った当初から思っていました。

「アイガ層」「アピア層」「アッキーア層」という地層が世界のどこかに存在することだけが分かっていて、
火のついたロケット花火を両手に持って空を飛んで、地層を探して世界各地を旅する物語。
途中、謎の光に襲われて別世界にワープし、
廃墟と化した惑星で一生を過ごすことを強いられますが、
「アイガ」「アピア」「アッキーア」という単語は、心の中でさらに大きな意味を持つようになっていきます。
地層にたどり着くことは結局できなかったものの、
その言葉の響きそのものが、自分にとっての大きな希望へと育っていく感覚。
そんなシーンの途中で、ハッと目が覚めました。

この夢の意味するものが何だったのかは今でもわかりませんが、
言葉の持つ力、いわゆる「言霊」のようなものを感じていたのは確かです。

なので、音楽化するにあたっては、
「アイガ」「アピア」「アッキーア」という言葉そのものを、
いかに魅力的に聴かせられるかを大事にしました。
夢の中で突如生成された謎の固有名詞を、どうしたら説得力あるものに変身させられるか、という。

10分もかけて大袈裟に展開していきますが、
冒頭部分の「アイガ・アピア・アッキーア」の合唱のメロディ、
地層をイメージした「ドンッ・ドンッ・ドンドドンッ」というリズムが一番大事で、
それらが曲の全てを支配していくような構成にしています。

曲の性格上、どう考えてもプログレ色が濃くなるのは明らかだったため、
アレンジにあたっては、
Yes、Peter Gabriel、Black Sabbath、EL&P、Rainbowといった、
ブリティッシュロックの重鎮達からの影響を、あえて前面に押し出してみました。
やるならとことんやってやれ!という感じで。
普段そんなにプログレに親しんでいるわけではないメンバー達ですが、
よくぞここまで付いてきてくれたなぁと感激している次第です。

くうかんきんぎょ君によるイラストも、
夢の中で感じた期待と不安の両方をバッチリ再現してくれています。
褐色主体の寂れた雰囲気の中に、きらりと希望が見える感じで、
とても気に入っています。