ぱっちりひつじ

げんじつにっき

ひつじAによる全曲解説:第10回「ひつじ」

ひつじA:りょう :
Category: おんがく,ゆめ

皆様、今年はぱっちりひつじを応援して頂きありがとうございました。
おかげで、とても良いスタートを切れたと思っています。
来年も色々計画していますので、今後とも末永くよろしくお願いいたします!

というわけで、最後の曲の解説です。

■ひつじ

○タイトルについて

僕が小学生の頃に見た悪夢を元にしているのですが、
珍しいことに、夢自体にタイトルが付いていたんです。
その時のタイトルが、「ひつじ」。
夢の冒頭、遠くから何か黄色いものが迫ってきたと思ったら、
黄色くて巨大なフォントで、ババーン!と、「ひつじ」と表示されたという。

曲の冒頭部分で、SEがフェイドインした後に、
ばよよ~~~ん!みたいなキメが入り、その後にわざわざ曲名が朗読されますが、
このあたりは、そんなタイトル表示シーンの再現です。

○本編の内容

近所の本屋さんに行くために、僕は自転車をこいでいました。
道の横にある空き地には、包丁葉っぱが風に揺れています。
いつも通りの風景、いつも通りの一日。

すると、道の先のほうに、女の人が立っていることに気が付きました。
黄色い着物を着た優雅な女性ですが、
こちらを向いたまま、身動きひとつせず、突っ立っているのです。
辺りの風景とあまりにかけ離れた、異様な存在感をかもし出していました。

すれ違うのがこわいなぁ・・・と思いながらも、
自転車に乗ったまま、ゆっくり通り過ぎてみる僕。
なんとか無事に通り過ぎたと思ったそのとき・・・

「!?」

強烈な痛みが、突如として僕の体を襲いました。
何が起こったのかわからず、そのまま自転車ごと倒れこみ、
後ろを振り返ると・・・

先ほどの黄色い着物の女性が、般若のような形相で何かを唱えていました。
耳障りな呪文のような音が、辺り一帯に響き渡り、
赤黒い煙のようなものが彼女の全身から立ち昇っています。

声を上げることも出来ず、苦しみもがく僕。
意識が遠くなり、錯乱状態に陥っていく中、
ふと、彼女が唱えている呪文の言葉がはっきり聞こえました。

「ひ~~つ~~じ~~!!!ひ~~つ~~じ~~!!!・・・」





○まとめ

そんなこんなで、怖い夢だったのですが、
微妙にアホな夢でもあったという。

あまりの恐怖にハッと飛び起きたのですが、
後からじわじわ笑いがこみあげてきました。
あ~なるほど、あのタイトルって、そういうことだったのね、と。

ただ、見ている最中は本気で怖かったので、
曲にするにあたっては、ひたすら執拗に怖くしてみました。
早くこの恐怖から開放されたい、しかしなかなか開放されない、みたいな。

演奏については、メンバー全員、全力でやってます。
たぶん相当キツかったんじゃないかと。

鍵盤弾き的には、ピアノをコブシで乱打したり、
シンセのつまみをグリグリしながらイヤなSEを出したり、
割とストレス解消になる1曲だったりしますが。

○仕掛けとか

曲の後半、「くるり ちゅうがえり ああ」の後のサビ。
ここで急に伴奏のリフが変化するのですが、これは適当に変えたのではなく、
今までのリフの音程を、逆さまに弾いています
(符割はそのままで、音程を逆からなぞる感じ)。
天地がひっくりかえるほどの激痛を「ちゅうがえり」と表現しているのですが、
リフの作りもそれに合わせてひっくり返してみました。

あと、この曲のテンポは126。
これは偶然だったのですが、語呂合わせすると「ひつむ=ひつじの夢」みたいな感じでニヤリ。
あと2つ落として124(ひつじ)にしようかなとも思ったのですが、
音楽的な気持ちよさを重視して、それはやめました。

○おまけ

この曲をミックスしている時のこと。
夜中に作業しているときに小腹が減ったので、
近所のコンビニに買い物に行ったのですが・・・。

夜中だというのに、電柱の陰に女性がぬぼーーっと立っているじゃありませんか。
「こ、これはヤバイ・・・」と思って腰が抜けそうでしたが、
勇気を出して、そろりそろりと通り抜けてみたところ・・・

近所のおばちゃんが、
連れている犬のおしっこが終わるのを暇そうに待っていただけでした(笑)

ひつじAによる全曲解説:第9回「エレベーターにのって」

ひつじA:りょう :
Category: おんがく,ゆめ

今回の解説、すごく長くなりました。
この曲、作詞の際には、語り過ぎないように気をつけていたのです。
なので、本当は解説などするべきではないのかもしれません。
読んだ後、曲の印象が変わってしまう恐れもありますし。

でも、いざ解説となると、ついつい詳細に語りたくなってしまうわけで。。。
「それでも読んでみたい」という人にだけ読んで頂けたら、と思います。

■エレベーターにのって

アルバム中、おそらく最も異色な曲。
悲しく、そして色彩感に溢れた夢だったので、
曲のほうも、自然にそういった感じになりました。
他の曲は、遊び心やアホらしさ、かわいさなどを必ずどこかに盛り込んでいるのですが、
この曲にはそれがありません。
というか、入れる余地がなかったのでした。





生きていくことに疲れ果て、
世の中の全てのものが嫌いになってしまった少年。
そんな「僕」が唯一救われる場所は、秋の公園でした。

紅葉した木々に囲まれ、そこら中に赤い葉っぱが落ちているのですが、
その中の、ひときわ沢山の葉っぱが積もっている場所に、
なぜか古びたエレベーターが設置してありました。
使われている形跡も無く、色褪せた感じでしたが、
まだ電源は通じているらしく、階数表示の「1」のところがオレンジ色に光っています。

そのエレベーターを見た瞬間、ふっと心が楽になるのを感じました。
初めて見たはずなのに、まるで昔からの友達に会った時のような感覚。
そのとき、エレベーターが僕の心に語りかけてくるような感じがしました。
「やっと出会えたね、僕も世の中がイヤになってしまって。
新しい世界へ行きたいんだけど、誰かがボタンを押してくれないと、自分独りでは動けないんだ。
だから、君がボタンを押してくれないかな?」と。

迷うことなく僕はエレベーターに乗り込み、地下1階のボタンを押しました。
その階は、「僕」以外の全ての人々が消え去り、新しく生まれ変わる世界。
イヤなものが全て無くなり、全てをやり直せる世界。
誰に教えられた訳でもなく、そのことは分かっていました。
「これに乗れば、理想の世界へ行ける。
このエレベーターも、きっと、そこへ一緒に行きたいんだ」
そのときは、そんな勝手な思いを抱いていました。

動き出すエレベーター。
機械の振動音を感じながら僕はワクワクし、静かな旅を楽しんでいました。

しかし。

しばらくそうしていた後、行き先のランプがふっと消え、
別の階(10階だったか20階だったかは定かではありませんが)のランプが点灯しました。

僕は焦りました。
なぜならその階は、「僕」以外の人々が生まれ変わる階ではなく、
「僕」の存在だけが消えてしまう階だったからです。
そして、一度そこに着いてしまうと、もう帰ることはできません。
(これまた、誰に教えられた訳でもなく分かっていました)

「どうして!?」と僕は叫びますが、
エレベーターは黙ったまま、何も語りかけてきません。
動き続けるエレベーター。
降りていっているのか、昇っていっているのか、よくわからない感覚。
でも、そうしているうちに、僕にはエレベーターの気持ちが分かってきました。

そうか、君は自分の存在を消してしまいたいんだ。
僕以上に傷ついていて、もはや何の希望も残ってはいない君。

彼と僕は、今や一心同体。
僕が消える世界に行けば、同時に彼も消えることになる。
自分では叶えられない望みを、僕を利用して叶えようというわけか。
僕の存在を消してでも、自分が消えてしまいたいという望みを・・・。
なるほど、そのチャンスをずっと探していたんだね。

裏切られたような、少し切ない気持ちになりましたが・・・。
ようやく出会えた心を許せる友達、その彼の理想を叶えてあげられるのは僕しかいません。
それならば、と、僕は心を決め、彼の決めた行き先に、一緒に付いていくことにしました。

それからどのくらいの時間が経ったかはわかりませんが、
どこかとても遠い場所に向かっていることだけは分かりました。
お互い一言も言葉を交わすこと無く、ただ静かな時間だけが流れていきます。
最後の瞬間に向かう、不思議と満たされた感覚。

そして、ついにエレベーターの振動が止まりました。
ゆっくりと開くドア。
まぶしい白い光が差し込む中、僕とエレベーターは細かい粒子状になって、
光と共に四散していき・・・
そのとき、僕は自分が涙を浮かべていることに気が付きました。
後悔なんてしていない、でもなぜこんなに悲しいんだろう・・・





と、ここで覚醒。

赤い落ち葉の鮮烈な色彩、エレベーターの感情、
そういうものが目覚めた後もどどっと押し寄せてきて、
布団の中でしばらく動けませんでした。

そして、四散したと思われた自分の体がまだここにあることを噛み締め、
この夢は絶対に覚えておかねばならないという、
使命感のようなものを感じていました。
起床後、すぐに歌詞が出来て、曲もアレンジも一日とかからずに仕上がったのですが・・・。

ぱっちりひつじの楽曲として成立させるにあたっては、かなり苦労しました。
メンバーにデモを聴かせたとき、ひつじE:ゆう から言われた言葉。
「この曲に、男ボーカルを入れる余地は無いよ」と。
ツインボーカル編成のバンドとしては、それで大丈夫なのか?と思ったわけです。
曲調もシリアスだし、そのうえ編成まで違うなんて、と。

でも、ひつじD:きょうせい の「気配で参加したら良いんじゃないかな?」という案で、
全てが解決しました。

もの言わぬエレベーター。
その役をひつじEにやってもらう。
歌うのではなく、ただ静かに呼吸している音をマイクで拾い、
その音をこっそり混ぜ込む。

そんな手法をとったわけですが、これがかなり功を奏しました。
ヘッドフォンで聴いても分かるか分からないか程度ですが、
入れる前と後では明らかな違いがあって、ミキシング作業中にはだいぶ興奮していました。
ちゃんと、ぱっちりひつじのメンバー全員で作り上げた楽曲として
成立させられたんじゃないかなと思います。

あと、場面展開に合わせてボーカルのマイク距離を調整し、
主人公である「僕」の存在感に強弱をつけたりと、
レコーディングの際にもいろいろ実験してます。

・・・とまあ、色々書きましたが、
この曲に関しては、ただ静かに情景を思い浮かべてじっくり聴いて頂きたいなと思います。
何かしら、この物語が聴いてくれた人の心に残ってくれたら、本当に嬉しいです。